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昭和63年7月、当時某コンサルタント入社2年目(当時23歳)の私は太田川沿川の加計町江河内地区に立っていました。 この年、県西北部を襲った集中豪雨は、この地区を中心に死者・行方不明者14人を数える災害をもたらしたのです。 私がその場に立っていたのは所謂「災害復旧」の為でした。 最初に現地に到着したとき、「この砂地はいったい!?」と思うほどの土砂が可部線の山側に堆積していたように記憶しています。
私は右も左もわからぬまま新人の復旧要員として現地測量にあたったわけですが、その光景は今でも忘れることはできません。

昭和63年7月豪雨の江河内の被災写真
出典「6.29 土砂災害(速報版) 広島県」
この写真の中ほどを左右に貫くのは可部線の高架橋、人的被害は殆どがこの可部線より山側で発生しました。
また、近年では平成11年6月29日にも太田川流域で土砂災害が起こりました。
当時、個人的に県の担当部署にお願いしてパンフレットをいただいたものが手元に残っています。この集中豪雨でも太田川水系では安佐北区亀山の大毛寺川左支川、安佐南区伴東の安川左支川で、土石流が発生し、それぞれ4名、1名の方が命を落とされています。

平成11年6月大毛寺川左支川被災状況 平成11年6月安川左支川被災状況
出典「6.29
土砂災害(速報版) 広島県」
ここで、広島県の土石流危険渓流数の全国比較をみてみましょう。
(グレーが広島県)

都道府県別土石流危険渓流箇所数(平成14年公表値、人家5戸以上対象)
「参考資料:河川便覧2004」
ごらんのとおり、広島県は日本でもダントツに土石流のリスクを背負った県です。
また、降雨量の多い県西北部に位置する太田川流域はその危険にまさに晒されているといっても良いでしょう。 土砂崩れに弱いとされている広島特有のマサ土(広島花崗岩)が多く分布しているのも太田川流域です。
また、太田川流域の特性として、平成3年の19号台風(大風台風)による倒木が多く放置されていて、集中豪雨の土砂とともにこれらが流下して被害を更に甚大なものにするといった事象があるようです。 これに対し、広島県では「鋼製の流木止工(倒木の流下を阻止するための柵のような構造)」を併用した砂防ダムの設置にも積極的に取り組まれているそうで、実際に平成11年6月の集中豪雨でもその効果を発揮した砂防堰堤があったそうです。(写真参照)

流木の被害を軽減した砂防堰堤
(越流部に鋼製のスリットがあり、流木を食い止めています。)
出典「6.29 土砂災害(速報版) 広島県」
なお、広島県に於ける砂防ダムの整備率は16%(平成17年度末)だそうです。
先ほど示したグラフは被災対象人家5戸以上の土石流危険渓流箇所ですが、この「5戸以上」という条件を外すと、広島県ではなんと9964もの数の渓流が「危険渓流」となるということです。
さて、皆さんも太田川沿いの山肌を眺めるとき、一度注意してご覧になってください。林相が急に変わっている斜面(土砂崩れ跡)が結構多いことに気づくはずです。 崩れた斜面の林相がクッキリ変っているところが沢山あります。 その下に民家がないというだけで大きなニュースにはなりませんが、太田川上流部の森を見るとき、この山肌のマダラ模様に(実際に被災地現場を見ているだけに)鳥肌が立つこともあります。
また、地名にも注目なさってみてください。 地名に「昔ここで土砂崩れがあったよ」というヒントが隠されている場合も少なくありません。(あまり固有名詞を出すと、その土地の風評被害にもつながりかねないのですが、先人の残してくださった「メッセージ」として川の名前の例を挙げてみます。・・・念仏谷川、蛇の谷川、津波川、水谷川、滝山川、江河内谷、下無念谷川、砂ヶ谷川、田吹川、悪谷川・・・いずれも太田川の支流です。)
広島県のパンフレットによる「こんな時、こんな前触れに注意!」という項目を列記しておきます。
・100mm以上の雨が降り続くとき(降った雨がたらいに10cm位溜まるような時。
・1時間に20mm以上の雨が降り続く時。
・雨が降り続いているのに川の水位が下がる時。
・山鳴りや木の裂ける音がする時。
・石のぶつかりあう音が聞こえる時。
・川の水が旧に濁ったり、流木が混ざりはじめる時。
※取材協力 広島県土木部土木整備局砂防室
尚、広島では国による直轄砂防も実施されています。この件に関しては、手続きを経た後、追って記述いたします。 |